朝、わたしは気だるさを感じたまま目を覚ました。
いつも部屋に置いているアロマの匂いがする布団ではなく、無臭で薄い布団は安心感は全くもてないまま朝まで私のからだを覆っていた。
隣りを見ると、もう彼は目を覚ましわたしを話す素振りはなくぎゅっと抱きしめていた。
「もう起きてたの?」と聞くと「寝るのがもったいなくてな」と、相変わらずそっけなく答える。
わたしと彼は「友だち」だった。
そう、昨日までは。
わたしはセフレがいて、彼は妻がいた。
世間から見ると不倫である。
言い訳であるが、お互い出会いを求めていたわけでもない。
わたしは今の彼氏と付き合う前、長年彼に片思いをしていた。
そして、結婚こそしているが彼もわたしを好きだった。
お互いにそのことは周知していたが、暗黙の了解で恋愛のことに関しては触れずに友だちとしてかかわっていた。
「最近出会いは?」と会うたび、わたしに彼氏ができたか気にしていた彼だが、このたび、わたしに彼氏ができたのだ。
彼氏との出会いは職場で、燃えるような恋愛ではなく、お互いに寄り添って安心できる蓮来だった。
わがままだが、彼氏とも別れたくないし、かと言って長く好きだった彼もすぐに忘れることはできなかった。
「お互いにこれで最後にしよう」と言って彼と会い、勢いでホテルに来たのは昨日の夜。
もしかしたら、これから一生後悔し続けるかもしれないことだ。
わたしたちは、すでにこんな関係になった以上友だちには戻れないし、これ以上はない。
「幸せになれよ」と、ふいに彼が言った。
彼はきっと、この先わたしと合おうとすることはないだろうし、連絡をくれることもないだろう。
冷めていてサバサバしているように見られがちの彼だが、実はすごく臆病で人から嫌われることを恐れている。
わたしは、彼の理解者でありたかったし、傍にいたかった。
でも、この先わたしたちの道が交わることはきっとない。
それは悲しいことだけど、長年の自分のどこにも報われずに落ち着かない子の気持ちが、ようやく「すとーん」と落ちたのだ。
セフレには申し訳ないことをしたけれど、後悔はしていない。
これから彼氏と。
これでようやく、彼氏だけを見て私は前に進める。
感がいい彼氏は、わたしが別の誰かと会ったことはわかるだろう。
そして、何か吹っ切ったわたしの表情をみて一言「お帰り」というのだ。
「お互い、幸せになろうね」そういいながら私は、早く彼氏に会いたくなった。